肩の痛みの原因
肩関節は非常に大きく動かせるため、他の関節に比べ不安定な構造になっています。無理な使い過ぎや負荷・外力・衝撃に対し、コンパクトな作りゆえに筋肉や軟骨は疲労しやすく、また傷つきやすいのです。
肘関節は手指や手首を動かす筋肉が数多く起始しているため、手指部の過使用などが影響し痛むことがありますし、スポーツや労働などで大きな力が繰り返しかかりやすい部分なため痛めることがあります。
五十肩
中高年に起こる肩の痛みと肩の動きが悪くなる病気です。特に原因がなく肩に違和感を感じ、その後徐々に痛みが強くなる場合と、ちょっとした肩のけが(例えば物を取ろうとして肩をひねったり、転んで肩を傷めたり)をきっかけとして発症する場合があります。痛みが強くなると、髪をとかしたりエプロンを結んだりする動作がしにくくなりなり、下着の脱ぎ着でも痛みを感じるようになります。寝ていて寝返りをうつと痛みのため目が醒めることもあります。肩ばかりでなく、くびや腕までが痛いこともあります。
五十肩は肩関節の変性した腱板に炎症が起こり発症します。どこに炎症が起こるかにより、烏口突起炎、肩峰下滑液包炎、肩腱板炎、石灰沈着性腱炎、上腕二頭筋炎などの病名がつけられます。これらを包括した肩関節周囲炎が病名としてよく用いられます。
発症して2~4週の急性期に治療が行われると慢性化せずにすむことがあります。慢性化した場合は半年~1年かかることもあります。適切な治療を受ければ回復を早められますし、障害が残ることもありません。
治療は理学療法(特に温熱療法と運動療法)、消炎鎮痛剤の内服、パップ剤の貼付、マッサージなどです。家庭では、肩をゆっくり大きく動かす体操をします。特に風呂で暖まったときに行うと効果的です。
肩関節石灰沈着性腱炎
腱板が変性し石灰が腱に沈着する病態です。石灰が沈着していても症状がないことがよくあります。肩関節石灰沈着性腱炎の特徴は、激痛です。痛みのために腕の挙上がまったくできなくなり、眠れないこともあります。当院ではエコーで確認後、アイシイングや独自の電気療法で治療しますが、効果が出にくい方は病院等を紹介いたします。
そこでは石灰を注射器で吸引したり、ステロイドを注入する治療が行われます。
腱板(けんばん)炎・腱板損傷・断裂
当院でも割りと多く見受けられます
腱板は肩周囲の4つ筋肉の腱が一緒になって、上腕骨に着いて肩の動きを安定させる役目をしています。中高年ではこの腱板が加齢変化で変性し、まわりの靭帯や骨に接触し磨耗して切れやすくなっています。40歳台で傷ついたり切れる場合は、多くは転ぶなどの外傷が原因となります。60歳台以後になると自然断裂(部分的な)もよくみられます。
症状は腕を自分の力で挙げることができなくなります。痛みのためではなく、力が伝わらないためです。反対の手でつり上げると挙げられますが、手を離すと落ちてしまいます。痛みはほとんどないことも、強いこともあります。また腱板の断裂した部分に一致して皮膚に陥凹がみられることがあります。断裂のあと数週経った例では、腕を外側に捻ると90°以上挙上できることもあります。
受傷後数日で腕の挙上訓練を始めます。痛みに対しては、マッサージ、電気療法、運動療法が中心となります。多くは1~3ヵ月くらいで90°以上まで挙上できるようになります。
病院での手術は、若い人、腕を挙上することの多い人、力仕事をしている人などを対象になるでしょう。
また肩から上腕部は骨折・脱臼・捻挫も多い部位です。
テニス肘(上腕骨外上顆炎)
上腕骨外上顆炎では、手首をそらしたり、タオルを絞ったり、ビンの蓋をねじって開けたり、ほうきで掃いたりする動作で、肘の外側に痛みを生じます。肘の外側の上腕骨外顆には、手首と指をそらす筋肉(伸筋)がついています。この筋肉に負担がかかることにより痛みを生じます。上腕骨外上顆炎は筋肉が骨につく箇所の付着部の炎症です。
原因は重いものを持って肘に負担がかかったり、なれない肢位で物を持って肘をひねったりして発症することがありますが、多くははっきりした原因がありませんが、使いすぎもあるかもしれません。
また、テニス愛好家にもこの症状がみられるため、テニス肘とも呼ばれています。ゴルフの初心者またはベテランにもみられます。
治療は、温熱療法、電気刺激、シップ、サポーター装着、マッサージ、ストレッチなどです。テニスやゴルフのプレーのさいには、エルボーベルトを装着し、肘への衝撃を和らげるようにします。また肘から腕にかけてのストレッチングや腕の筋肉、特に伸筋の筋力訓練を行います。
日常生活での注意事項は、痛いほうの手で重いものを持たない、やむ終えず持つときは手首をそらさないなど、肘に負担がかからないようにします。長引くことが多い痛みですが、根気よく治療を続けることが大切です。
野球肘について
野球肘と呼ばれる障害は、3つのタイプがあります。
最も多いのは肘の内側の障害です。ボールを投げると、まず肘が前に出てボールを握っている手は遅れます。このとき肘の内側の靭帯や骨に引き伸ばす力がかかります。この力により肘の内側に障害を生じます。症状は手首や指を曲げると肘の内側に痛みが出ます。これは手首や指を曲げる筋肉が肘の内側につながっているからです。また肘の伸びが悪くなります。病名は上腕骨内上顆炎です。数か月の投球制限と治療でかなり良くなります。
投球動作で肘の外側には関節の中に圧迫とねじりの力がかかり、関節内の軟骨と骨に骨折が起こります。これは離断性骨軟骨炎と呼ばれる病態です。定期的にレントゲン検査やエコー観察で骨の状態をみますが、場合によっては半年程度投球が禁止されます。放置すると骨がはがれ、関節鼠となり関節がひっかっかる症状が出ます。肘の外側の痛い場みは早めに受診して下さい。
投球動作の最後に肘が伸びきったときに、肘の後ろ側の関節を包んでいる膜が傷ついたり、骨がはがれたりして痛みが出ます。骨の所見がない場合は治療や数か月の投球の禁止で軽快します。
野球肘の原因はほとんどすべてが投げすぎによるものです。同じ球数を投げても障害の出る人もいれば出ない人もいます。痛みや違和感を感じたらまず投球数を減らしてください。
放っておくと将来、肘が変形して屈伸などが制限されます。